アップル(Apple)がiPhone向けに独自のSIMカードを開発し、複数の携帯通信網をSIMカードの差し替え無しで使い分けられるようにする取り組みを進めていた可能性については昨年秋にお伝えしていた通りだが、ここへ来てこの「ユニバーサルSIM」(Universal SIM)技術開発の可能性に関する話が再浮上している。
Bloombergは米国時間10日、アップルによる「廉価版iPhone」("iPhone nano")開発プロジェクトの可能性に関する記事を公開したが、この記事のなかではアップルが「ユニバーサルSIM」(Universal SIM)技術の開発を進めているとする2人の情報筋の話も紹介されている。それによると、この技術はiPhoneユーザーが複数のGSMネットワークをSIMカードを差し替えずに使い分けられるようにするもので、端末提供側にとってもSIMカードの配布にかかるコストの削減が期待できるという。
またアップルではiPhoneに搭載するソフトウェアに変更を加え、ユーザーが契約する携帯通信事業者を変更した際にも、通信キャリアの手を借りずに、自分で設定を変えられるようにすることにも取り組んでいるとする情報源の話も上記記事では紹介されている。
これとは別に、GigaOMは先頃、今月初めに予約受付がはじまったベライゾン・ワイアレス(Verizon Wireless)向けCDMA版iPhone 4に、GSMとCDMAの両方に対応するクアルコム(Qualcomm)製の「Gobi」チップが内蔵されていることを踏まえ、「SIMカードスロットを持たないCDMA版iPhone 4をGSMネットワークで使うことは無論できないが、iPhoneの次期バージョン(iPhone 5)ではこれと同じ通信チップが搭載され、本当のデュアルモード機能が提供される可能性がある」と指摘していた。
さらに、アップル関連の有力ブログ「Apple Insider」では9日に、アップルが2008年に取得を申請していた「Dynamic carrier selection」という特許が先頃同社に認められたことを伝える記事を掲載。同記事によると、この特許を使った仕組みでは、ユーザーの携帯端末にその地域でサービスを展開する複数の通信事業者のサーバから料金等の情報が送られ、そのなかでもっとも条件の良い通信網を端末が自動的に選択、もしくはユーザーが選んで使うことが可能になるという。
Apple Insiderでは、アップルがこの仕組みを利用して、MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体サービス事業者)事業を運営する可能性も考えられるとした上で、他の通信事業者からネットワーク回線を借りてユーザーにサービスを提供している従来のMVNO事業者の場合と異なり、アップルの仕組みの下では主導権がユーザー側(とアップル)に移るため、通信料金の価格競争につながる可能性が高いとしている。またこの特許取得の記事に言及したGigaOMでは、「この特許と、ユニバーサルSIM技術--あるいはデュアルモード対応のiPhoneが組み合わされば、アップルが自社で(携帯通信)ネットワークを運営するというアイデアも現実味を帯びてくる」と述べている。
米国市場でiPhoneの取り扱いがAT&Tの一社独占でなくなったように、携帯通信事業者と端末メーカーの力関係が変化するなかで、仮にアップルが想定するMVNOのようなサービスが実現すれば、通信事業者間の争いは、これまでのユーザーの端末買い換え時から、通信サービスの利用時ごとに生じることになるとGigaOMでは指摘し、それが「本当の競争力が働くモバイルブロードバンド市場の出現」につながるとしている。
またアップルが、一部で低価格化傾向が進む各社のAndroidスマートフォンと価格面で対抗し得る廉価版iPhoneを投入し、さらに通信事業者との契約期間といった制約もなく料金的にも競争力のある通信サービスをユーザーに提供することができれば、同社が大きな成功を手にすることも考えられるとGigaOMでは述べている。
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